こんにちは。
筆者は、最近ある本を読んでいました。
それがこちらの本、『ソマリランドからアメリカを超える』です。
『ソマリランドからアメリカを超える』を読んで
あらすじ
”あの”ソマリランドでグローバルエリート校が誕生!? 解説・高野秀行氏
辺境の遊牧民が、わずか数年でMITに進学!!
謎の国家の新設校が起こした、奇跡のような本当の話。
解説・高野秀行氏
世界のフロンティアは、ソマリの子どもたちの中にあった。
破綻国家・ソマリアの中にある、平和な“未承認国”。謎の独立国家として一躍その名を知られたソマリランドに一人の男が飛び込んだ。
元ファンドマネージャーの男が私財を投げ打って挑んだのは、学校創り。それも、ハーバードやMITに進学しうるグローバルエリートを育成する学校だった。ナショナリストの突き上げは無論のこと、学校乗っ取りを企む地元有力者まで現れて七転八倒! しかし、イスラム教徒でもない白人男性は、不可能とされた夢を生徒たちと実現していく。
わずか数年で逆境を覆した教育革命は、世界の辺境から起きた!!
感想
いつものように書店をうろうろしている時に、ふと目に止まったのがきっかけです。
それまで、ソマリランドについては知っていましたが、ごくごく浅い知識しかありませんでした。
筆者がソマリランドについて知っていることといえば、
数年前、イラン旅行をきっかけに中東に興味を抱いていた筆者は、アフリカ東部のジブチやソマリアなどのアラブ連盟に加盟している地域も調べていました。
ちなみに、ソマリランドについては、こちらの本が有名だと思います。
こちらの本の作者である高野秀行氏は、今回の「ソマリランドからアメリカを超える」の解説もされています。
この解説で、ソマリランドの立ち位置や国民の風習、経済状況などをわかりやすく書かれていて、本編を読み終わった後に解説を読むことで、作者のジョナサン・スター氏の当時の状況がより深く理解できるようになっています。
まあ上述のように、数年前からソマリランドについては、興味を持っていた筆者ですが、今回は教育関係の本ということもあり、半ば衝動買いのような形で家に帰ったのでした。
ソマリランドや教育に対して、深い知識のないまま現地に高校を作ってしまった作者ですが、当然のごとく様々な問題にぶち当たります。
その問題を解決するために奮闘する姿に感銘を受けるわけですが、一番感銘を受けたのは、やはり生徒たちの成長が感じられるところです。
本書では、作者の心情が非常にたくさん記されているわけですが、作者が様々な問題を解決するために奔走し、その結果生徒たちが成果を出した時に書かれる作者の心の内は、読者も共感してしまうと思います。
何もかも手探りの学校づくりで、数年で困難を乗り越え、成果を出した作者と、教育らしい教育を受けられなかったが、成長して最終的にアメリカのみならず世界中の高等教育機関への留学を勝ち取ったソマリの子供たちに、たくさんの勇気と感動をもらえる本です。
もちろん作者のゴールは、アメリカの大学へ留学させることではありません。
作者が学校を作ったのは、やがて留学を終えた卒業生たちがソマリランドに帰ってきて、国を一から立て直すこと。
今後、彼らがどのようにソマリランドを作っていくのか、とても楽しみです。
全体的に文章が読みやすく、作者の心情や当時の状況が思い浮かんでくるような文章です。
作者自身の文章表現もあるでしょうが、翻訳者の言葉選びや文の組み立て方も非常に洗練されていると感じました。
改めて翻訳者の凄さを感じながら読み進めていたわけですが、この本は、「好きだな」と感じる表現や言葉選びが多いと感じました。
なので、好きな文章表現や言葉選びをいくつかご紹介します。
好きな言葉選び
途方もなく素晴らしい機会に恵まれた
この「途方もなく」の使い方にシビれました。
作者がいかに素晴らしいと感じているかが読み取れる一文だと思います。
ぼくは二年間も、あんな税金の無駄遣いの最たる学校で誠実さを守りつづけていたのに
この一文も、作者の心情がストレートに伝わる一文です。
「税金の無駄遣い」という言葉で、当時の作者の学校に対する心情と学校の状況を言い表しています。
「最たる」の使い方も完璧で、どれだけ憤っていたかがよく伝わってきます。
人は最悪の事態にならないと確信するまで、最悪の事態を想定する
これは、人の本質をよく突いていて、作者の考えがよく表された一文だと思います。
相手のことを理解しなければ、相手がどんなことに腹を立てるのかわからない。
これは、普段の人間関係を気づく上で、意識したいことですね。
また、異文化コミュニケーションでも意識すべきことで、違う文化圏の人と交流する際に、相手の文化や考え方などを理解していないと、どういった言動が相手に不快感を与えるのかわからないことはよくあります。
世界は悪事をはたらく者に滅ぼされるのではない。何もせずに見ている者に滅ぼされるのだ。
この一文は、本書を読んでいて、特に印象に残った一文でした。
作者の当時の状況をよく表している一文ではありますが、よく思い返してみれば、日常生活でもこういったことはよくあるし、いつでも起こり得る、ということがわかります。