ちゃいぺるブログ

中国語とタミル語を中心に、外国語学習の情報を発信します

知ることは、知らないことが増えること【語学試験とネイティブが使わない表現について】

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こんにちは。

タイトルに日本語能力試験について書いてしまいましたが、日本語に限らず、英語や中国語にも通じると思います。

 

高レベルの語学試験を「使わない」と切り捨てる人

筆者は、日本語教師養成講座の420時間を終え、ようやく日本語教師として働けるようになったばかりですが、以前から主に中国で日本語教育とはいろいろ関わりがありました。

そこでよく耳にしたのが、「N1の単語や表現なんか、日本人は使わない」というものでした。

もちろん、日本語能力試験(JLPT)の中では、N1は最もレベルが高く、日本人から見ても解き応えがあるくらい、難しい試験です。

表現によっては、知らない人もいるでしょう。

 

そして、このN1の単語や表現を「日本人は使わない」と評価してしまうのは、決まってN1に合格するレベルにない学習者でした。

 

まあ、このセリフの意味するところとしては、「ネイティブが使わないのだから、自分は勉強する必要はない」ということでしょう。

 

気持ちは分かる

筆者としては、以前からこのセリフを聞くたびに、

「なぜそのレベルにも達したことがない人が、ネイティブは使わないと断言できるのだろう」と思っていました。

とはいうものの、彼らの気持ちも理解できます。

筆者も中国語学習者で、以前はHSKも学習していました。

HSKで最もレベルの高い6級は、一つ下の5級と比べて、要求される語彙数は倍になり、5級との壁はかなり厚いです。

このレベルになると、ひたすら語彙力を伸ばすことが、合格するためには必要不可欠となり、何千個もの語彙を前にすると、なんのために勉強しているのか分からなくなってきます。

そうなると、自分が今学習している内容は、ネイティブでも難しいことを学習しているのだと、思い込みたくなってしまうのです。

HSKの最高級である6級に受かったら、その先はもう中国語で学ぶべきことはない、くらいの気持ちでもありました。

おそらく、日本語学習者も同じような気持ちなのかもしれません。

 

語学の試験に合格することがゴールではない

上に書いたような気持ちの人たちは、試験に合格することをゴールにしているのかもしれません。

しかし、実際にHSK6級に合格した身から言うと、HSK6級に合格したからといって、中国語に精通するわけではありません。

HSK6級に合格してから感じることは、

  • HSK6級のために覚えた語彙や表現は、日常会話でも頻繁に使われる。
  • HSK6級の語彙だけでは、日常生活で全く歯が立たない。

ということです。

これらは、やはり合格する前にはわからなかったことであって、合格したからこそ見える景色なのかもしれません。

tutty527.hatenablog.com

以前、こちらの記事にも書きましたが、中検準一級の語彙の学習をしている時も同様で、学習した語彙が日常生活でも頻繁に使われていることに気づきます。

 

このことから感じることは、語彙数が少ない状態においては、自分がどれほどレベルが低いのかを自覚できない、ということなのかもしれません。

 

考えてみれば、当然かもしれません。

外国語のレベルが低い状態では、外国語のレベルが低いことしか伝えられないし、理解することができません。

それを何度も反復して定着してくると、その状態である程度コミュニケーションが成り立つことに気づき、それ以上のレベルを身につけようと思わなくなります。

そうなると、自分のレベルがある程度低いことは自覚しつつも、普段使っている、または聞こえている外国語にないものは、「ネイティブが普段使わない表現」というカテゴリーに放り込まれてしまうのかもしれません。

となると、N1の表現が「ネイティブが普段使わない表現」だらけになるのも無理はありませんね。

 

今回は、日本語能力試験を書きましたが、これは何も外国人の日本語学習に限った話ではありません。

中国語の学習にも、英語の学習にも同様のことがいえると思います。

「ネイティブが普段使わない表現」というものに振り回されずに、これからも貪欲に地道に楽しく学んでいこうと思います。