こんにちは。
今回は、日本語の「は行」の音についての記事です。
「は行」と「ば行」は対立していない
日本語の五十音の中でも、「は行」は異質なものではないでしょうか。
通常の音「は」に加え、濁音「ば」と半濁音「ぱ」がありますね。
そもそも「は」と「ば」は全然性質の違う音です。
例えば、「か」と「が」とか「た」と「だ」であれば、同じ調音方法で無声と有声の違いしかありません。
しかし、「は」と「ば」はそもそも発音の仕方からして全く違います。
なんなら「ば」と対立しているのは「ぱ」です。
「は行」は元々「ぱ行」だった
では、なぜ「は」(ha)に濁点をつけると「ば」(ba)になるかというと、「は」は元々「ぱ」(pa)と発音されていたからです。
そして、言語一般に見られる現象ですが、話者にとって負担のないものにどんどん変化していく傾向があります。
奈良時代までは「ぱ」で発音されていた「は」は、平安時代には「ファ」で発音されるようになりました。
平安時代のなぞなぞで、以下のようなものがあります。
「母には二度会うけど、父には一度も会わないもの」、な〜んだ?
答えは、「唇」です。
理由は、「は」と発音するためには唇を合わせなければいけません。
つまり、昔は「はは」という単語は「ぱぱ」と発音されていたということが分かるなぞなぞなのです。
また、当時の発音が分かる資料として、こんなものもあります。
(日本のことばとHistoriaを習い知らんと欲する人の為に世話に和らげたる平家の物語。)
上の図は、天草版の平家物語の表紙です。
この資料の面白いところは、当時の口語体の日本語をポルトガル語式のローマ字で表記しているところです。
上の図を見ると、「日本」を「NIFON」と書いたり、「平家」を「FEIQE」と書いたりしていることがわかります。
つまり、「ほ」や「へ」を「フォ」や「フェ」で発音していたことが分かります。
こうした発音の変遷が分かると、当時の歴史や読み物にも興味を広げられる気がして、とても面白いです。